超音波骨折治療法(ちょうおんぱこっせつちりょうほう)

【超音波骨折治療法とは】

今日、整形外科で一般に行われている骨折治療は、整復、固定後は骨が自然に修復されるのを待つというものです。しかし、最近になって超音波が骨の癒合を促進させることがわかり、治療器として応用されるようになりました。

低出力超音波パルス(LIPUS) という、弱い超音波を骨折部位に毎日一定時間(20分間)当てることにより、骨折の癒合日数が約40%短縮されることが認められています。

低出力超音波パルス(LIPUS)の画像

低出力超音波パルス(LIPUS) という、弱い超音波を骨折部位に毎日一定時間(20分間)当てることにより、骨折の癒合日数が約40%短縮されることが認められています。

【様々な骨折に適応】

◆新鮮骨折例
一般の新鮮骨折では、整復・固定といった適切な初期治療を行うことにより、骨癒合を得ることができます。しかし、早期社会復帰や早期スポーツ復帰といったより早い骨癒合を希望される場合に超音波治療が有効で、これまでにも高い治療効果が認められています。

【難治性骨折治療例】

21歳女性。乗馬中に落馬し受傷。他院で治療を受け、術後2年経過しても骨癒合不良のため当院を受診された。「尺骨骨折後偽関節」の診断のもと、超音波骨癒合治療を開始した。

◆難治化要因のある骨折例
一般的に、折れた骨と骨のずれによる隙間(ギャップ)が大きいものや、周辺の軟部組織が損傷し、骨折部の血行が悪いといった局所の状態が不良なもの、感染、糖尿病などの合併症をともなうもの、高齢、喫煙などの全身性の要因があるものなどは、治癒期間が長くなる傾向があります。そのような難治化要因のある骨折に対しても有効です。

初診時
(骨折手術後2年経過しており、偽関節と診断。超音波治療を開始した。)

骨折初診時の画像

◆難治化してしまった骨折例
一般に骨折後3か月以上経過して、仮骨(新しくできる骨)の形成がほとんど見られない骨折を「遷延治癒骨折」といい、さらに9か月以上経過して治癒の過程がほとんど止まっている状態の骨折を「偽関節」といいます。これら2つを合わせて「難治性骨折」と呼びます。

難治性骨折に対しては、一般的に再手術が行われますが、超音波骨折治療法によって手術せずに骨癒合が得られるケースがあります。

右の症例は当院で経験した難治性骨折の一例です。落馬事故で受傷され他院で手術治療を受けましたが、術後2年間骨癒合が得られず当院を受診されました。一時は再手術も検討しましたが、超音波骨折治療を試みた結果、大変良好な結果が得られたケースです。2年間つかなかった骨が、約8か月間でほぼ骨癒合が得られました。 以下の症例は当院で経験した難治性骨折の一例です。落馬事故で受傷され他院で手術治療を受けましたが、術後2年間骨癒合が得られず当院を受診されました。一時は再手術も検討しましたが、超音波骨折治療を試みた結果、大変良好な結果が得られたケースです。2年間つかなかった骨が、約8か月間でほぼ骨癒合が得られました。

8 か月経過時
(骨癒合が促進している)

骨折8か月経過時の画像

1年経過時
(再手術することなく完全骨癒合が得られた)

骨折1年経過時の画像

【効果のメカニズム】

超音波が骨折部の骨癒合を促進するメカニズムについては未だ正確には解明されておりませんが、一般的に骨は外界からの物理的な刺激を受けることによってその強度を維持・増強することができると考えられています。無重力の世界で活動する宇宙飛行士の骨が脆くなることや、骨粗鬆症の患者さんに我々が運動を勧めるのは、この外界からの物理的刺激が骨を丈夫にするためにいかに重要であるかを物語っています。

超音波は非常に小さな物理的刺激ですが、それを一定時間(20分間)、定期的に骨折部に与えることにより、これが外界からの物理的な刺激となって骨癒合を促進してくれているのではないかと考えられています。

【アスリートたちも利用】

超音波治骨折療器は、川口能浩(サッカー)、松井秀喜(野球)、デイビット・ベッカム(サッカー)などのトップアスリートたちが使用したことで一般にもよく知られるようになりました。他にも多くのアスリートたちが、骨折の積極的治療として超音波骨折治療器をいち早く取り入れることにより、早期スポーツ復帰を果たしています。

トップアスリートたちも行っている治療です。

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